煌めくシャンデリアの下、完璧な所作で紅茶を注ぐ黒メイド。
その動きに乱れはなく、瞳には忠誠の光が宿っている。
――けれど、胸の奥では小さな‘ざわめき’が生まれ始めていた。
ご主人様の目が彼女の胸元を見つめている。
「こちらへ来なさい。」
その視線の意味を、深く考えないようにした。
ご主人様の声に、彼女は一瞬、手を止めた。
命令。それは、絶対の言葉。
「いや…！やめてください…！そんなところ…」
「ご主人様……私は、どこまで従えばよいのでしょうか。」
けれど、その呟きは確かに屋敷の空気を震わせた。
日に日にエスカレートしていく要望。
初めて見せる迷いの瞳。
忠誠と心の叫びが交錯し、彼女はわずかに唇を噛んだ。
声は小さく、誰にも届かない。
返事を求めぬまま、ご主人様は静かに頷いた。
その瞬間、メイドは理解した。
――この沈黙こそが、次の命令だったのだ。
「ご主人様、私は……もう、戻れません。」
「お願いします…もっと…！」
月明かりの中、涙を落としながら祈るように頭を垂れる黒メイド。
（奥様にも優しくして頂いているのに…ごめんなさい）
（もう、どうしたらいいか分からない…）
その姿は、哀しみと快楽に苦しんでいた。
全カラー・全文字入れ・220P
ToLOVEるとらぶ〇
古手〇唯
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